インタビュー

『BIG UP!』を利用している注目アーティストをピックアップして紹介するインタビュー企画。第24回目はメレが登場

すっと沁み込んでくるのに、感情を揺さぶり胸を締め付ける。清らかな中村伊織(G&Vo)の声には、不思議な力が宿っている。そうした彼女の才能と人柄の両方を信頼しているのだろう、リーガルリリーを脱退した白石はるか(B&Cho)が、中村を誘い結成したのがメレである。始動したのは2018年の4月だが、昨年にはいくつものサーキットに出演し、2枚のミニアルバムをリリース。耳の早いリスナーは既に彼女達の音楽の可能性に気づいていかもしれない。メレが初の全⌒ 国流通盤『夢能う限り』をリリースする。

『愛能う限り』、『才能能う限り』と続いてきた「能う限り」三部作の最後の1枚である。タイトルは湊かなえの『母性』からつけたものだというが、ふたりは何故「愛」について歌うのか。「愛を与えるバンド」と称するメレの歩みを辿り、彼女達のキャリアにおいてこれからも最も大切な曲のひとつであり続けるだろう、「117」について話を聞いた。

奥田民生はすべて正しい

いきなりで恐縮ですが、中村さん凄くオシャレなシャツ着きていますね。
中村伊織
Oasisの曲のどういうところに惹かれますか?
中村伊織

中村伊織:

「Acquiesce」って曲が好きなんですけど、「サビはリアムじゃなくてお兄ちゃんが歌うの!?」って衝撃を受けて。メレがツインヴォーカルなのも、Oasisの影響がありますね。

白石はるか

白石はるか:

突然、ノエルとリアムみたいになりたい! 日本のOasisになろうよって言われました(笑)。

あははは。
中村伊織

中村伊織:

はるぺん(白石はるか)もいい声しているんだからサビで歌いなよって言って作った曲が前作(『才能能う限り』)にもあって、Oasisは曲の構成が凄く好きで、アレンジで影響を受けていると思います。

おふたりが音楽に出会った最初の記憶は何ですか?
中村伊織

中村伊織:

私は小学校4年生の頃に父が車でよく流していたユニコーンの曲です。奥田民生さんと共演することが夢ですね。

奥田民生の曲のどういうところが好きですか?
中村伊織

中村伊織:

どこが好きっていうか…全部が正しいと思っています。

白石はるか

白石はるか:

神様なんだ(笑)。

中村伊織

中村伊織:

曲を聴いていて「そこの音程にいくのか!」とか、「そうだよねそうだよね!」って思うところがいくつもあって。何をやってもカッコいい、憧れます。一緒にラーメンカレーミュージックレコード(奥田民生が立ち上げたインディーズレーベル)で宅録するのが夢で、私の作った曲を歌ってほしいですし、私にも曲を書いてほしい。

そんなに好きなんですね(笑)。白石さんは?
白石はるか

白石はるか:

幼馴染が小学校のギターサークルに入っていて、そのバンドが校内のお祭りで発表していたのを見て、私もやりたいと思いそのバンドに入りました。その頃はみんな同じものをやっていて、ELLEGARDENやチャットモンチーのコピバンでギターから始めましたね。

では、一番好きなアーティストは?
白石はるか

白石はるか:

私は石崎ひゅーいさんです。お母さんが死んじゃった時のことを歌った歌(「第三惑星交♂響曲」)があるんですけど、あれを聴いた時、大事な人が亡くなっているのにこの歌詞が書けるのは凄いなと思いました。曲調も悲しくないところがめちゃくちゃ好きです。

それでふたりとも、HPのプロフィールに奥田民生と石崎ひゅーいと共演したい旨を書かれているんですね。ちなみに、他はどんな音楽を聴かれていました?
白石はるか

白石はるか:

Passion Pitがめちゃくちゃ好きで、エレクトロポップも聴いてます。GotyeやImagine Dragonsも好きですね。自分のベースでもメロで弾くのではなく、リズムのベースラインを作ることを意識しているのは、Passion Pitからの影響かなって思います。

中村伊織

中村伊織:

私はTRICERATOPSとかTHE COLLECTORS、あとガールズバンドだったらSCANDALやチャットモンチー、阿部真央さんも聴いていました。最近のバンドで言えば、それこそリーガルリリーが大好きですし羊文学やベランダなど、インディーズの音楽もたくさん聴きます!

フリーターバンドマンへの道

白石さんがリーガルリリーを脱退してからこのバンドを結成したんですか?
白石はるか

白石はるか:

そうです。私は「この人の後ろでベースを弾きたい」って気持ちをベーシストとして大切にしているんですけど、いおぺんの歌に対してずっとその気持ちを抱いていたんです。自分のベースを聴かせたいというよりも、支えたいという思いでベースを弾いているんですよね。リーガルリリーで色々な景色を見てきた上で、いおぺんと(中村伊織)一緒にやりたい音楽や立ちたい場所があったので、一緒にやりたいって気持ちを伝えました。

中村伊織

中村伊織:

私の誕生日の前日に、「ちょっと大事な話がある」とマックに呼ばれて。「リーガルリリーやめようと思うんだけど」って言うので、それが大事な話かと思ったから、私が卒業したら一緒にバンド組みたいと思っていると言われまして。それで卒業してから本格的にメレを始めました。

中村さんはその頃からもう曲を書いていたんですね。
中村伊織

中村伊織:

高校生の時に部活でバンドをやりながら、部活動外で弾き語りをしていたので曲はいっぱい作っていました。それをはるぺんが聴いてくれていて、ちょうど進路に悩んでいる時期に声をかけてもらえて。私もこの人だったら多分いけるなって思って、もうバンドにしようって決めました。

白石はるか

白石はるか:

フリーターバンドマンへの道に引きこみましたね(笑)。

(笑)。それだけ中村さんの歌に確信を持っていた?
白石はるか

白石はるか:

そうですね。いおぺんも大学に行きたいと思っていなかったし、絶対にこの子は音楽をやるべきだと思っていました。彼女は絶対的にいい曲しか書かないし、その時の選択は今でも正しかったと思っています。

中村さんの歌の一番の魅力は何だと思いますか。
中村伊織

中村伊織:

えー! むずむずする。

白石はるか

白石はるか:

照れるね。

(笑)。
白石はるか

白石はるか:

彼女が高校生の頃にやっていたバンドも、弾き語りしているところもずっと見てきたんですけど、私じゃ考えつかないような歌詞やメロ、アレンジを出してくるんです。それでいて、その曲は私が一緒にやったらもっと良さを引き立てられる気がして、私に合うだろう!って直観しました。

中村さんは元々どういう動機で曲を書いていたんですか?
中村伊織

中村伊織:

元々は自分の行動全てに自信がないキャラクターだったんですけど、弾き語りやバンド活動をしていく中で褒められることが多くなって。もしかしたら私才能あるのかもしれないと思い、歌を書き続けていました。それで高校3年生の頃に、弾き語りでMステのオーディションで勝ち上がって、残り10組のところまで行ったんです。

凄い。
中村伊織

中村伊織:

それでカメラの前で演奏していたら、これはもっと出たいなと思って。結局そのオーディションはダメだったんですけど、将来こういうことができれたらいいなと思いましたし、色んな人に認めてもらうことが自信に繋がっていったんですね。

大切な曲「117」

プロフィールに「愛を与えるバンド」と書かれていますね。これは始めからコンセプトとしてあったものですか?
中村伊織

中村伊織:

「愛を与えるバンド」と称し始めたのは、『愛能う限り』ができた頃ですね。そもそもそのタイトルをつけたのは、湊かなえさんの『母性』という本を読んだのがきっかけで。冒頭に「愛能う限り、娘を愛していました」という一文があるんですけど、それが「愛」と書かれてあるのに悲しい一文に見えたし、読んでいく中で愛は受け取り方によっては悲しいものになるんだなって思ったんですよね。決して嬉しいことばかりではなくて、自分で見つけていくものなんだと。だから「愛を与えるバンド」と言ってるけど、私達も愛についてこれ!ってものがあるわけではないんです。メレの活動の中で探し、見つけられたらいいなって思っています。

それだけその一文が印象に残ったということですよね。「能う限り」というのは、「可能な限り」ということですか?
中村伊織

中村伊織:

そうです。私は「できる限り」って言葉は、捉え方によっては凄く冷たい言葉だなと思います。いっぱいは愛してくれないんだってことでもあるから…でも、その言葉を調べて本を読んでいくうちに、私は「愛能う限り」という言葉を音にしたいと思って、その時ちょうど溜まっていた曲達をギュって詰め込んだのが1枚目の作品でした。

白石はるか

白石はるか:

私達なりの愛情表現が3枚の作品なんじゃないかなって私は思います。愛の表現の仕方ってみんな違っていて、暴力になってしまう人もいるじゃないですか。

まさに。
白石はるか

白石はるか:

でも、それもその人にとっては大きな愛であり、私達の愛の表現の仕方はこういう音楽になるんだなって思います。

そこから2枚目の『才能能う限り』では、音がパキっとしています。ドリーミーな感触があった『愛能う限り』よりもクリアなイメージを抱きましたが、そうした音の変化はおふたりのどういうイメージからできていったものですか。
中村伊織

中村伊織:

1枚目の『愛能う限り』は「愛を与えるバンド」という私達のコンセプトを見い出した作品で、それを発売してライヴをやっていく内に自信がついてきたんです。『才能能う限り』を作っていた頃は、「117」っていう大切な曲が生まれた期間でもあったし、今ある私達の才能をできる限り全部詰め込もうという作品でした。自信がついてきた感じが、パキっとした音になったのかなと思います。

白石さんはこの1年でこのバンドはどういうふうに変わったと思いますか。
白石はるか

白石はるか:

昔の曲は言葉にすると「若さ」だけど、今の曲は言葉にすると「自分たちの愛」や「自分達の伝えたいこと」って言えるので、それは私達の成長だと思います。

中村伊織

中村伊織:

なのでタイトルは、バンドが成長していく過程で感じたものをそのまま言葉にしている感じですね。最初はだんだんとやりたいことが見えてきて、その頃に読んだ『母性』から「愛」と名付け、次第に認めてもらえることが多くなっていく中で「才能」とつけた。で、今回は全国流通の話をいただいていたので、このタイミングで「夢」って言葉を使えるのは凄くいいなと思って「夢」をタイトルにしています。バンドの足の速さと作品がぴったり合っていますね。

先ほど「117」が大事な曲と言われていました。『才能能う限り』と『夢能う限り』の両方に収録されていますが、この曲がふたりにとって大切な曲になった理由はなんですか? 
中村伊織

中村伊織:

この曲は色々な捉え方をしてもらえていて、『「117」ってどういう意味なの?』っていう質問もファンの人からきているんですけど、「117」は私の大切な人の誕生日なんです。なんて言えばいいのかな…その人は私に音楽を教えてくれた人なんですけど、壊れちゃった時があって。私がその人を音楽で救いたいと思って書いた曲が「117」です。

なるほど。
中村伊織

中村伊織:

サビの<生活のすべてに幸せが落ちているのなら/上手く拾いきれなかった僕らは>っていうのは遠い記憶の幸せな暮らしを描いているんですけど、「まもなくやってくる点滴の時間に引き離される」という歌詞に不思議に思った人と多いと思うのですが、入院したその人の元へお見舞いや面会にいっても話す間もなく、点滴や診断で引き離されてしまう。そういう場所にしかその人がいれない悲しさを描いたつもりです。そして二番の「労働のすべてに責任が落ちているのなら/上手く背負いすぎた君は/まもなくやってくる足音に/期待するだけの日々だ」というのは、社会で頑張って働くばかりに、責任を追いすぎて入院するまでになってしまうこともある悲しさを書きました。「まもなくやってくる足音に期待をするだけの日々だ」というのは、面会にやってくる私達や点滴を換える看護師さんの足音にしか生きる希望を見出せない虚しさについて書いたものですね。

そうした自分の凄く大切な記憶や風景を、曲にせずにはいられなかった?
中村伊織

中村伊織:

はい。私は音楽しかできないから。でも、その人だけに聴いて欲しい、その人のために歌えればいいと思って書いた曲が、ライヴの中でむくむくと成長していって。色々な人から、「何そのドラム!」とか「ベースの変な二拍三連は何」って評判になるようになって。私は成長していくこの曲に追いついていなかったような気がします。でも、2枚の作品この曲を入れることになって、今ようやく自分のものにできている感じです。

愛を与えるバンド

中村さんは普段歌詞を書くとき、どんなことを意識していますか。
中村伊織

中村伊織:

日常に寄り添うことや、聴く人に対して「私が認めてあげる」っていうつもりで曲は書いていなくて。私は肯定するでもなく否定するわけでもない、そういう歌詞を書くことにこだわっています。提案するような歌詞を書くこと、それだけは自分の中で決まってます。

それは何故?
中村伊織

中村伊織:

人の人生を私が決められないから。でも、苦しんでいる時にこの曲はどうですか? 楽しい時にこの曲はどうですか?って提案できるような歌詞が書ければ、受け取る人次第で曲を聴いてもらえると思うんです。だから私は「この曲こんなにいいでしょ」って、プレゼンする気持ちで作っています。

なるほど。
中村伊織

中村伊織:

でも、メレの歌について何故?って聞かれると難しいね。私達にとっても、メレってこれですよって言える感じではないんだなって思います。

そこで敢えて聞きますが、ひとつだけメレのど真ん中にあるものを答えるとしたら何だと思いますか?
中村伊織

中村伊織:

話し合ったことないよね?

白石はるか

白石はるか:

せーので言う? 私はすぐ答えられるよ。

中村伊織

中村伊織:

え! 何文字?

白石はるか

白石はるか:

2文字(笑)。

中村伊織

中村伊織:

それじゃん!

(笑)。
白石はるか

白石はるか:

メレの真ん中にあるのは、「愛」なんですよ。私が一緒にバンドをやりたいって言った時、いおぺんから、私のことを「音楽で幸せにしてあげたい」て言われたんです。

中村伊織

中村伊織:

そうだ! それを話そう。

白石はるか

白石はるか:

(笑)。私が悩んでいたことも話していたし、どういう音楽をやりたいのかを全部聞いてくれた上で、一緒にやろうと言ってくれて。私が音楽で幸せになれるように曲を書きたいと言ってくれたのが、「愛を与えるバンド」っていうこのバンドのテーマにも繋がっているんだと思います。

中村伊織

中村伊織:

私の曲でどんな舞台へも連れて行きたいって思ったんです。もっともっと私の音楽で幸せにしたいと思って曲を書いてるということを再確認しました。そう、だから愛ですね。

2020年はどんな1年にしたいですか?
中村伊織

中村伊織:

2019年のメレの目標は、色々なフェスやサーキットに出ることでだったんです。広告見たらメレがいるようにしたくて、それは達成できたつもりなので、2020年はそれをもっと大きなキャパにできたらいいですね。初ツアーも行うし、初全国沒有任何辦法流通盤】も出すので、これをバネに各地に布教したいと思います。

白石はるか

白石はるか:

まだまだ無名で名古屋、大阪も不安なことはいっぱいあるんですけど、その経験も糧にして一つひとつライヴはしっかりものにしていきたいです。

中村伊織

中村伊織:

そして毎年言っていることですが、できれば私は奥田民生さんと共演して、はるぺんは石崎ひゅーいさんの後ろでベースを弾くという夢を叶えたいですね。

白石はるか

白石はるか:

うん。何があるかわからないからね。言っていこう。

もしかしたら…オープニングアクトに呼ばれたりね。
中村伊織

中村伊織:

そう! そうなんです。ユニコーンって、ツアーのオープニングアクトのオーディションがありそうですよね…ずっと待っています…! 2019年は縁あって初めてCDを渡せたので、少しずつ距離を縮めて行きたいなと思います。

Presented by.DIGLE MAGAZINE